「お肉のよもやま話」料理で再発見!お肉の魅力、おいしい秘密 2023年1月号
週刊いな「お肉のよもやま話」2023.1.26
今回は「兎汁」についてご紹介させて頂きました!
■令和5年の大河ドラマは「どうする家康」。
誰もが知る歴史上の有名人・徳川家康。300年の太平の世を開いた男の話。
だけど、今回は、ひとりの弱き少年家康くんが、乱世を終わらせた奇跡と希望の物語という切り口。
後ろ盾だてもなく、豊かな国土もなく、あるのは個性派ぞろいの家臣団だけという状況で、
「どうする?」と日々揺さぶられるような乱世を必死に生き抜く家康の姿を描くそうだ。
■そんな家康くんのご先祖様は、その昔、流浪の末に、
信濃の国いまの松本あたりに落ち延びて来とった。
寒い寒い日のことだったようなんだけど、松本の林藤十郎さんという人が、
雪の原へ出て兎を射止めて、一本ネギと兎の吸物でもてなしたという伝承があるんだに。
その頃から、どういうわけだか、徳川家が隆盛に向かってったんだって。
ほいだもんで、兎汁は、徳川家にとっては、縁起物。
吉兆の食べ物だとされて、将軍家では、毎年元日、兎の肉の汁を食す習わしになったのだそうです。
ちなみに、この時のネギは、松本の伝統野菜「松本一本ネギ」で、徳川家に毎年贈られておったらしいに。
■兎汁を出した松本の地元豪族の末裔である林忠崇は、
幕末、1万石の領地を朝廷に返上し、自ら浪人となって徳川家を守るため、明治政府と戦かったとか。
林家は、石高は少なかったみたいだけど、元旦には将軍から最初に盃を賜る名家で、
その儀式は「献兎賜盃(けんとしはい)」という名前で呼ばれとったんだって。
一杯の兎汁のおかげで、林家は江戸時代最高の名誉を賜りつづけたし、
徳川家も一杯の兎汁の恩、そして食べる縁起、吉兆を大事にしとったんだと思う。
■2023年、令和5年は兎年。
ここ数年いろんなことがあったから今年は、今までの数年間から大きくぴょーんと飛躍して欲しいなぁ。
そもそも、兎が縁起が良い動物ちゅーのは、わりと昔から言われとる。
長い耳は情報収集に長けとって、仕事などが好転するから「福をもたらす」。
ぴょんぴょん元気よく飛び跳ねるから「困難を飛び越える」。
月にうさぎのカタチが見えるから、月の使いといわれ「ツキを呼ぶ」、んだでね。
■さて、実は、今でも、徳川家康の産まれた岡崎城のすぐ隣にある
龍城神社では、お正月には、古くから江戸城のお正月の習慣であった兎汁が振舞われておるんだに。
毎年、縁のある信州から兎肉を、ということで、ウチにご注文いただいて、
ありがたい気持ちで送らせていただいておりますに。
■いまも昔も、生きていくってことは、
正解のない決断を「どうする?」「どうする?」と、迫られることの連続。
オラんとこも小さい肉屋だけど「どうする鈴木屋」と迫られることの連続だ。
どんなひとも、日々「どうする?」を抱えて必死で生きてるから、
そんな時、ちょっと食べると元気が出る、食べる縁起・食べる吉兆になるようなお肉を
今年もつくっていけたらと思います。どうぞ本年もよろしくお願い申し上げます。