「お肉のよもやま話」料理で再発見!お肉の魅力、おいしい秘密 2024年9月号
週刊いな「お肉のよもやま話」2024.9.26
今回のテーマは漫画「逃げ上手の若者」からのお話!
この夏の初めから「週刊少年ジャンプ」で連載中の
「逃げ上手の若君」(松井優征作)というマンガが
テレビやオンライン配信で放映されとります。
このマンガの時代は、1330年代半ば、
ちょうど鎌倉時代と室町時代の端境期。
滅亡した鎌倉幕府で1人生き残った幕府の跡継ぎ・北条時行が、
「逃げ隠れ」の才能を活かし、鎌倉奪還のため厳しい試練と
戦いに身を投じていく物語なんだに。
時行くんは、地位や権力に興味がないやさしい性格。
武芸の稽古は逃げるほど嫌い。
ほいだけど、逃げ落ちた信濃国諏訪の地で、
諏訪頼重から逃げ隠れの才を見抜かれて磨いていくんだわ。
時行が隠れ住んだっちゅって言われとるのが
諏訪からの南アルプス山麓の秋葉街道沿いの山。
杖突峠南の山中、上伊那や下伊那の各地におったみたいだぞぉ。
伊那市高遠町藤沢の「権殿屋敷」富県の「北条屋敷」、
大鹿村桶谷には北条時行の墓ってのもあるみたい。
ここらから四方八方に道が延びとって
物資を運ぶ塩の道でもあったから、逃げやすかったかな。
ところで、主要な登場人物の諏訪頼重は、
時行を守り育てる重要な人物。
鹿食の免罪符を出しとる諏訪大社の関係者だに。
神職を務めながら諏訪地方を治めておって、
ときに神力を使い、時行を武将に育てていく。
頼重は、つまりは、建御名方神の子孫で、生き神様。
8歳で大祝に即位し、15歳で下りて武士になる。
言わずと知れた「狩猟の神」としても知られる頼重。
アニメやマンガを見とったら、
鹿や猪の狩猟のシーンがいきなり多く出てきた。
弓の名手・小笠原貞宗が、耳の裂けた鹿がいると縁起がいい、とつぶやき、
巫女の耳を自ら弓で射ち抜き傷をつけ、
耳の裂けた雌鹿と嘲笑するシーンは、
まさしく諏訪大社の御頭祭の耳裂鹿を
暗示しとって、たまげたに。
しかし、逃げ上手な時行くんの俊敏な身のこなし、
身体の強さはすごい。
性格は今のところ「ビビリ」かもだが、
その身体の強さは、質実剛健と言われた鎌倉武士そのものじゃないか。
屈強、頑強な強さの秘密は、この時代確立された一汁一菜にあったらしい。
幕府を確立したバイタリティは玄米ご飯に、
味噌汁と魚の干物という栄養食によるものなんだって。
鎌倉は海があるでなぁ、カツオやイワシ、
貝類を普段からよく食べとったんだぞ、きっと。
逃げ上手の身体の基礎は子どもの頃の
そういう食習慣でできあがって、
そのあと、山ん中に逃げてきて、
狩猟の神・頼重に教わって、狩猟の技を磨き、
鹿肉、猪肉、鳥肉をきっと食べて、
チカラをつけていったんだに、時行くんは。
さて、鎌倉から遠く離れた遠山郷。
実は、遠山郷一帯は、鎌倉時代には鎌倉の
鶴岡八幡宮の信濃国唯一の神料地だった。
霜月祭りの起源にも関係しているという説もある。
鎌倉時代に時行くんのご先祖・北条時頼が
和田宿の高平薬師さまに立ち寄り、
武運長久を祈願して、当時の名主数右衛門に命じ、
一振りの宝剣を縁の下に埋めたという伝説も。
時頼が開いた鎌倉五山のひとつ建長寺の修行僧が作っとった
精進料理「建長汁」がなまって
「けんちん汁・けんちゃん汁」になったと言うけど、
遠山の郷土料理「けんちゃん汁」も鎌倉の影響なんだろうか…妄想膨らむなぁ。
オラも、鎌倉や時行くんに敬意を表して
肉入りけんちゃん汁、っていうか、肉入り味噌汁でも作ってみるかな。